なろう系の構造に酷似 『ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!-』(2007)
主人公の警官は、優秀すぎるが故に上司から疎まれていた。
仲間すら味方になってくれず、彼は左遷を余儀なくされる。
とある田舎町に左遷された主人公。
相棒は親に頭が上がらず、頼りないデブ。
どこまでも牧歌的な街の雰囲気。
そんなのどかな街で、次々と殺人事件が発生。
しかも、殺され方が酷い。
警官は捜査をしていくが、証人でさえ非業の死を遂げる。
あり得ない方向から瓦礫が落ちてきて、哀れミンチになる証人。
だが、村人は誰も一連の出来事を事件だと認識しない。
一方的に「事故」として処理する。
明らかにおかしい。
最終的に、主人公にまで危険が及ぶ。
絶対絶命の窮地に追い込まれた彼らが取った行動は……抹殺!
ここからハイテンションの銃撃戦が展開される。
ブラックで狂気に満ちた展開。
のどかな街を舞台に繰り広げられる、血なまぐさい戦闘。
前半もそうなのだが、緊迫したシーンなのに、笑わずにはいられない。
「なんでやねん!?」と、画面に向かって何度ツッコミを入れたことか。
「自分たち以外は、全員敵」
と認識した主人公。
顔つきも変わり、優等生然とした渋面から、すべてを悟りきってキリングマシーンと化した渋面へと変貌を遂げる。
同じ顔つきなのだが、明らかに何かが違うのだ。
変わり方は、相棒のデブの方が分かりやすいかも。
|映画批評が認めた傑作
本作は、雑誌『映画批評』で「読者ランキング二位」だった。
ちなみに、当時の一位は『ダークナイト』だ。
|創作ポイント:
実は「異世界転生系」の構造に酷似
監督は、『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』や『アントマン』を手がけた、エドガー・ライト。
他の方の見解によると、この監督のてがける作品の特徴は、
「行って戻ってこない系の話」
が多いそうだ。
大抵の物語とは、「行って戻ってくる」というのがセオリーとされている。
主人公は見知らぬ土地に危険を顧みずに行って、酷い目に遭って、それでも勝利を勝ち取って、しかし帰るべき土地へ帰ってくる。
しかし、本監督の作品はそうではない。
帰ってこないのだ。
一度、酷い目に遭って追放されたからだ。
追い出された先でも、主人公の未来は散々である。
ぶち切れるのも無理はない。
結果、
「だって俺を追い出したのはテメエらだろ? だったら戻ってきてやらないもんねー」
という展開になっていく。
まるで、シュワちゃんの『コマンドー』の最後だ。
「もう二度と会うことはないでしょう」
このパターンが多いのだという。
むしろ、その土地の価値観をブチ壊し始めるエンドが多い。
つまり、昨今の「なろう系」作品の構造に近いのではなかろうか。
追放ものであり、彼が左遷された閑静なベッドタウンは、まさに異世界そのものだ。
ここを舞台に、彼は障害最も恐ろしい目に遭い、反撃ののろしを上げる。
本作の結末については、ご自身の目で確かめていただきたい。
きっとあなたも、「ヒャッハー!」と化すだろう。
|まとめ
優等生すぎる主人公は、追放して窮地に追い込む。
そうすれば、人間くささが剥き出しになって、イイ感じに残念になってくれる。
●余談
オレが見るサイモン・ペグって、こんな役ばっかだな。
『殺し屋チャーリーと6人の悪党』とか。
他の作品だと、こうじゃないんだろうけど。