絶・対・に・創作の役に立たない映画評のブログ

創作に役立つ、オススメの映画を紹介

エゴイスト同士の対決 『告白』(2010)

 

f:id:pixymoterempt:20190217115435p:plain

生徒に家族を殺された教師の復讐譚

 
 自分が受け持つクラスの生徒に、娘を殺された、シングルマザーの教師。

 娘は保健室に預けられていて、生徒たちからも人気があった。
 そんな娘が、プールで遺体となって浮いていた。
 警察は事故と認定。
 しかし、明らかに殺人だった。
 
 犯人は二人。実行犯と、死体をプールに遺棄した人物。
 学校側が支給した牛乳を配る担任。
 
「犯人の牛乳に、エイズウイルスまぜたから」

 娘の父親がHIVに感染していると分かったため、担任は結婚しなかったのだ。
 犯人への復讐のため、娘の父親の血液を牛乳に混入させたという。
 感染するかは不明だが、自分が奪った命と向き合うように、担任は促したのである。

 
犯人の目星

 犯人の一人Aは以前、生徒のタレコミから異常性が分かっていた。
 自分の発明品で動物を虐待して殺している、それをネットに公開していると。
 発明品の一つである「防犯財布」は、賞を取るような傑作。
 しかし、注目されたのは授賞式と同日に起きた、未成年による一家殺害事件だった。

 やがて本人から、娘の殺害を自供される。
 犯行の様子を、担任の前で堂々と語ったのだ。
 担任が遺族とも知らず。

 凶器はポシェット。
 担任が娘からねらだれて、買ってあげなかったポシェットだ。
 娘は嬉々としてポシェットを開けてしまう。

 もう一人の犯人Bは、学校に馴染めず、サボりを繰り返していた。
 補導され、交番へ迎えに男子教師だったことに腹を立てる。

 AとBは、プールサイドで隣家の犬にエサを上げている娘に近づき、ポシェットを開けさせた。
 Aは死んだと断言する。

 だが、この時娘は気を失っていただけ。死んではいなかった。  

 事実はBがプールに落としたことによる水死が原因である。


創作ポイント:エゴ

 本作は「命の重さ」とか「甘っちょろい正義感」などがテーマではない。
 人間のエゴを極限まで煮詰めて作られた作品だ。

 母に認められたいというAのエゴから犯行が計画され、Bの承認欲求の末に実行された。
 Bの母は執拗に息子を保護し、結局悲惨な末路を遂げる。
 
 復讐鬼となった教師は、後任の教師さえ巻き添えにして、犯人たちを追い詰める。

 せっかく心の拠り所を見つけた犯人Aも、エゴ故に自身を追い詰めていく。

「命の重さ」とか、きれい事のようなセリフが大量に流れてくる。
 だが、本作は登場人物の誰にも同情できないように作られている。
 全員が歪んでおり、それゆえに生々しい。

 主人公も同等で、予測不可能なところまで自分を追い込んでいる。
 それゆえに、この映画は負のテンションが異様に高い。


まとめ

 読者からの同情をぶった切っても、創作は可能である。
 
●余談

 この映画、なんとラストシーンまで予告編に使われた。
 監督はちょっと愚痴っているらしい。