エゴイスト同士の対決 『告白』(2010)
|生徒に家族を殺された教師の復讐譚
自分が受け持つクラスの生徒に、娘を殺された、シングルマザーの教師。
娘は保健室に預けられていて、生徒たちからも人気があった。
そんな娘が、プールで遺体となって浮いていた。
警察は事故と認定。
しかし、明らかに殺人だった。
犯人は二人。実行犯と、死体をプールに遺棄した人物。
学校側が支給した牛乳を配る担任。
「犯人の牛乳に、エイズウイルスまぜたから」
娘の父親がHIVに感染していると分かったため、担任は結婚しなかったのだ。
犯人への復讐のため、娘の父親の血液を牛乳に混入させたという。
感染するかは不明だが、自分が奪った命と向き合うように、担任は促したのである。
|犯人の目星
犯人の一人Aは以前、生徒のタレコミから異常性が分かっていた。
自分の発明品で動物を虐待して殺している、それをネットに公開していると。
発明品の一つである「防犯財布」は、賞を取るような傑作。
しかし、注目されたのは授賞式と同日に起きた、未成年による一家殺害事件だった。
やがて本人から、娘の殺害を自供される。
犯行の様子を、担任の前で堂々と語ったのだ。
担任が遺族とも知らず。
凶器はポシェット。
担任が娘からねらだれて、買ってあげなかったポシェットだ。
娘は嬉々としてポシェットを開けてしまう。
もう一人の犯人Bは、学校に馴染めず、サボりを繰り返していた。
補導され、交番へ迎えに男子教師だったことに腹を立てる。
AとBは、プールサイドで隣家の犬にエサを上げている娘に近づき、ポシェットを開けさせた。
Aは死んだと断言する。
だが、この時娘は気を失っていただけ。死んではいなかった。
事実はBがプールに落としたことによる水死が原因である。
|創作ポイント:エゴ
本作は「命の重さ」とか「甘っちょろい正義感」などがテーマではない。
人間のエゴを極限まで煮詰めて作られた作品だ。
母に認められたいというAのエゴから犯行が計画され、Bの承認欲求の末に実行された。
Bの母は執拗に息子を保護し、結局悲惨な末路を遂げる。
復讐鬼となった教師は、後任の教師さえ巻き添えにして、犯人たちを追い詰める。
せっかく心の拠り所を見つけた犯人Aも、エゴ故に自身を追い詰めていく。
「命の重さ」とか、きれい事のようなセリフが大量に流れてくる。
だが、本作は登場人物の誰にも同情できないように作られている。
全員が歪んでおり、それゆえに生々しい。
主人公も同等で、予測不可能なところまで自分を追い込んでいる。
それゆえに、この映画は負のテンションが異様に高い。
|まとめ
読者からの同情をぶった切っても、創作は可能である。
●余談
この映画、なんとラストシーンまで予告編に使われた。
監督はちょっと愚痴っているらしい。