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金田一耕助の冒険(1979) パロディで隠されているが、横溝らしさは満載

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パロディ満載のメタ金田一


 
 用事で電車に乗っている金田一は、乗客の女性が悩んでいたクロスワードパズルを、あっさりと解く。
 
「私は金田一耕助!」
「ああ、言語学者の!」


 等々力警部とともに、短編に収録されている未解決事件の鍵を握る「不二子像の首」を探すことに。

 金田一は、ローラースケートで盗難をする窃盗団のアジトに連れ去られる。
 彼らがこれまで集めた美術品の中には、なんと行方不明だった「不二子像の首」が。


 このように、本作は金田一が関与した事件を追いかけ、金田一を「活躍しない探偵」と茶化す、いわばメタ作品だ。
 

金田一はなぜ活躍しないのか


 
 ただ、ストーリー自体はそれなり。

 金田一短編の登場人物を強引ながら絡ませていき、事件は複雑になっていく。
 あの短編の人物が、別の短編の人物と接触していたり。
 

 パロが意味不明なことを除けば、「現代日本の犯罪状況に厭世的になっている金田一」というテーマが根付いている。

 とはいえ、パロディが包み隠してしまっていて、本編の訴えたいテーマが見えづらい。
 おそらくわざとなのだろうが。

ポイント:探偵の立場とは?


 
 象徴するのは、ラストの長ゼリフだ。
 これはある種、ミステリ小説に置ける探偵の立場とは何かという答えになっているという意見もある。
 

 現実の事件は、どうしても矛盾が残る。
 特に日本の事件はどうしても血筋が絡んでしまう、と。


「――等々力さん。探偵ってのはね、一つの事件に対して、怒りや憤りを持っちゃいけないもんなんですよ。一つの殺人から、どう広がっていくだろう、そしてこの殺人がもう一つの殺人を生むんじゃないかしら、そう考えることが楽しいんですよね」


 などと、なんとも恐ろしいことを口にする。

 事件の途中で犯人を予測することはできる。
 でも、むやみに犯行を阻止すべきじゃないって気がする、とさえ。

 事件は一人歩きし、もう一つの犯罪が起きる。
「犯罪は成長する」
 というパワーワードまで飛び出す。
 
  
「私、日本のおどろおどろしい殺人って好きなんです。――毛唐(欧米)みたいに、ピストルバンバン撃ち合う明日の殺人と違って、日本の殺人は、過去の魑魅魍魎を払い捨てるための殺人なんです。人を殺せば殺すほど、絶望的になって行きますもんね、日本の犯人は」

まとめ


 世界じゅうどこ捜したって、私ひとりですよ。
 犯人の気持ちを思いやる探偵なんてのはね……。

余談:体感三時間


 
 二時間弱の映画だが、ウィキでパロディを確認しながら見たので、体感三時間くらい長
いと感じた。

 大昔のパロディ満載で、全部分かる人は皆無なのではないだろうか。

 オーケンですら「もはやパロが存在価値をなくし、『観るなぞなぞ』と化している」と著書で揶揄するほどの作品である。