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KUBO/クボ 二本の弦の秘密(2016) 泣きの三味線

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三味線弾き語り少年


 
 クボ(矢島晶子)は母を看病するかたわら、三味線で折り紙を操り物語を伝えて日銭を稼いでいた。
 ハンゾウという侍が、三つの武具を集めて月の帝を倒すという物語だ。
 しかし、肝心のところで途切れてしまう。

 クボの母は、月の帝からクボの目を守るため、この村に流れ着いた。
 父はクボを守るために死んだという。

 ハンゾウと帝の対決も、追っ手から逃れる母親から聞いた話である。

 クボは母から、「夜に出歩いてはいけない。追っ手に見つかるから」と聞かされていた。
 しかし、死人と話ができるお祭りに参加して、つい約束を破ってしまう。

 ついに追っ手が現れた。
 なんとその人物はクボのオバだった。
 母が助太刀に来たが、クボを逃がすだけが精一杯だった。

愉快な仲間と、ロードムービー

 目が覚めると、クボの隣には真っ白いサル(田中敦子)が。
 彼女はクボを見守っていた置物が、母親によって命を吹き込まれた存在だった。

 サルは言う。「三つの武具を手に入れろ」と。

 一つ目の武具を探していると、ハンゾウがクワガタの武士(ピエール瀧)に襲われる。
 サルが助けようとするが、クボは「大丈夫。このクワガタに敵意はない」と、攻撃をやめさせた。

 クワガタはハンゾウの配下で、弓の達人だった。
 彼は父の家紋が入った旗を大事に保管していた。

 一つ目の武具である刀を手に入れようとしたが、ガイコツに襲われる。
 ガイコツの頭に刺さっているのは分かったが、刺さっている刀が多すぎた。

 全部抜き取って、ようやく手に入れた。

 二つ目の武具は、川底にあった。
 しかし、人の心を覗く妖怪に襲われて、クボは自分を見失いかける。
 クワガタの手によって助けられるが、オバに襲われたサルが致命傷を負ってしまう。

ポイント:魂で繋がった親子

 本作は最初から最後まで、親子の絆を描いた話だ。
 同時に、血の繋がった者たち同士の争いでもある。
 
 月の帝とは、クボの祖父である。
 母親は祖父とオバから、クボと彼の目を隠していた。
 愛する夫を失いながらも。

 オバはオバで、凍った心で人を平然と殺せる姉に憧れていた。
 ヤンデレを絵に描いたような女だ。

 
 いわゆる「行って帰ってくる話」であるが、その結末は切なく、ほろ苦い。

 ただ本作は、「人が死んでも、物語は語り継がれる」と、頻繁に語られる。
「どんな物語にも、終わりがある」と。
 終わりはあっても、人々には語り継がれていくのだ。

 物語が未完のままなことを、ネット小説界隈では「エターナる」という。
 月の帝もそれが狙いだ。
 しかし、クボの出した結末は違う。
 クボは二人の魂に導かれ、祖父と違う答えに辿り着く。

まとめ

 人の命は終わりがあるが、物語は語り手がいる限りエタらない。
 

余談


 
 エンディングテーマは、ジョージ・ハリスンが作詞作曲した、ビートルズの楽曲

「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」

 である。

  原語版EDは、ロシア出身のシンガー、レジーナ・スペクターが歌っている。
 が、日本版は吉田兄弟が演奏している。


 ジョージ・ハリスンが「泣きのギター」を表現できず、クラプトンに演奏を依頼したくらい、思い入れのある楽曲である。

 吉田兄弟の三味線は、悲痛だが未来のある本作のドラマとマッチし、
「泣きの三味線」
 と表現してもいいだろう。