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何者(2016) 就活生の闇は深い 

  

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朝井リョウ作品の映画化。
 

 就活に立ち向かう中、常にiPhoneで何かを発信している佐藤健さん。

 不器用だがどこか要領がいい元バンドマンを菅田将暉さんが演じ、その彼女役は有村架純さんだ。

 留学経験など、有利な武器を持つ二階堂ふみさんはツイッターで自分の成果を発信し続けている。

 彼女の同棲相手、岡田将生さんは、就活生を醒めた目で見つつ焦っている。


人間性の異様さ
 
 初めは就職に向けて動く若者達の日常系かなと思わせる作り。


 面接を受ける就活生と、インタビューを受ける劇団員を対比させるシーンがある。

 就活生のインタビューシーンでは、言葉の端々がいちいち嘘くさい。
 
 一方、劇団員のシーンだと、涙を流して本音剥き出しで語る。
 本気度はこちらの方が上のように思える。これも白々しいといえばそうだが。

 嘘で塗り固めた就活生、あられもなく本音をさらけ出す劇団員。
 どっちも異様に見えてしまう手法が面白い。


ポイント:本性

 中盤、佐藤健の演劇仲間と仕事すると、岡田将生から告げられる。

 一ヶ月定期的にシナリオを要求され、「じっくり作りたい」と、岡田将生はその件を蹴ってしまう。
 
 
 オレも小説講座に通っているので、「こういうヤツおったなー」としみじみ思っていた。
 書けば結構それなりのものを書くのだが、何も書かない。
 
 こういうタイプは、小説講座にはいなかった。
 書けないって人は沢山いたけど、書かないってタイプはそもそも講座になんか来ない。
 ただ、オレの連れにこういう奴がいた。

 大作主義というか。
「いつか書こうと思ってる」というヤツは、基本何もしない。
 
 そう言うヤツに限って、「駄作!」と人をディスったりは平気でするが、いざ自分が書くとなると手を止めてしまう。
 駄作を書く自分が許せない。

 おそらく、本作の人物もそういうタイプかと。
 

 かつて佐藤健は「頭の中にあるうちは、何もかも傑作だ」と、友達の演劇仲間に発信した。
 それにより、演劇仲間は地味ながらも一歩ずつ前に進んでいく。
 このときの佐藤健の「取り残された感」よ。
「お前が背中押したったんちゃうんかい」と。

 その言葉で、今度は岡田将生を責める。

 直後、映画のタイトルである「何者」の意味が分かる。

 映画の雰囲気がガラッと変わる。


 なぜ佐藤健がずっとiPhoneをいじっているのか。
 彼は何を見ていたのか。

 それが判明すると、「うわぁ」と引いてしまう。

 だが、彼を責めきれない部分が、誰にでもどこかにあるのではないだろうか。

 
まとめ

 誰にでも二面性はある。


●余談

 電王とWのコンビなんよね、よく考えたら。