『リズと青い鳥』(2018)フグになりたい
|タイトルは、コンサートの課題曲名
『響け!ユーフォニアム』本編TV版の一年後を描いた作品。
原作小説だと『北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章』の辺りだとか。
オーボエ担当の鎧塚みぞれと、フルート担当の傘木 希美。
二人は、音楽室へ向かう。
上履きの揃え方からして、二人の性格は対照的だ。
希美のポニーテールを追いかけるみぞれ。
二人はソロの練習を始める。
自由曲の演目は「リズと青い鳥」。絵本のタイトルだ。
ひとりぼっちのリズが、少女と出会って仲良くなる話だ。
「まるで私たちみたいだ」と、希美は言う。
実は少女は青い鳥の化身で、最終的に少女と別れてしまうという。
希美はこのラストが今ひとつだと感想を述べた。
「ハッピーエンドの方がいいよね」と。
|鎧と剣
パン屋で働くリズは、孤独な少女。
食事も睡眠もひとり。
嵐が過ぎ去った朝のこと。外へ出ると行き倒れの少女が。少女はリズの名を知っていた。
部隊は再び吹部パートへ。
リボンちゃん(優子)が部長になってる!
一年の子が絡んでくるが、みぞれは相手にしない。
希美と二人で練習したそうにしたが、希美は部員とファミレスへ。
剣崎という一年は、「鎧塚先輩とうまくいってない」と希美にこぼす。
霙の孤独感を表す描写が続く。
名前しか書いてない進路指導標、素数の授業、共同作業を要求されるバスケ。
ちなみに、水槽に入れられているフグをみぞれが可愛がるシーンがある。こんな場面は原作にはないらしい。フグちょっとそこ代われ。
進路は決まった。音大を受けることにした。
希美が受けることにしたから。
理由を聞いて、親友の夏美と優子の二人は固まる。
|黄前出張所
オーディションに落ちた剣崎を励ますため、みぞれは彼女をプールへと誘う。
彼女は少しずつ、希美への依存を解いていく。
エースである麗奈には分かっていた。みぞれが希美に遠慮していると指摘する。
否定しきれない。
自分がリズなら、青い鳥をずっと閉じ込めてしまう。
だが、それは創作で言えば間違った選択である。
このままではいけないという自覚は、みぞれにもあるのだ。
希美は、「たとえ別れても、また会いたくなったら会いに行けばいい」と考えている。
希美とみぞれでは、物語の解釈が全然違う。
希美とみぞれは、ユーフォ主人公の久美子と麗奈のセッションを聴く。
TV版主人公組は、希美たちのパートを演奏している。
「おう、またな!」と相手を見送る男らしいリズを、麗奈は表現した。
麗奈のトランペットを聴いて、希美は心が揺らぐ。
そして、みぞれは第三楽章に込められた『愛ゆえの決断』を、自分なりに昇華、解釈するにいたる。
|創作ポイント:何をもって友情とするか?
このドラマの争点は、「友情とはなにか」である。
よく「ユーフォは百合」という解釈をする人がいるが、二人の間にあるのは恋愛感情ではないと思われる。恋愛感情とはまた違うベクトルの話かと。
冒頭、みぞれと希美はべったりとくっついている。
希美が先行して、みぞれが後に続く関係。それで、お互いに居心地が良かった。
しかし、将来が見えてくる毎に、進みたい道にずれが生じ始める。
それを受け入れるのか、拒絶して現状を維持するのか、二人は人生の岐路に立たされる。
本作はハッピーエンドと取るか、バッドエンドなのか。
それは、本作を細かく解釈したのであれば、おのずと分かるだろう。
|まとめ
居心地のいい場所にずっといるだけが、友情ではない。
●余談
残念ながら、本作ではシリーズ恒例の『黄前相談所』は、なりを潜めている。
そもそも、
「希美とみぞれが自分たちで関係を解決する」
という部分に焦点が当てられている。
そのため、黄前久美子のような便利屋の登場は難しかったみたい。
ただ、麗奈とのセッションシーンなど、部分部分で関わっている。
さすが黄前相談所の面目躍如か。