太陽を盗んだ男(1979) 撃たれても死なない菅原文太
|原爆は台所でも作れる!
冴えない理科教師が原発からプルトニウムを盗み、原子爆弾を作成。政府を脅す話。
だが、日本の警察はプルトニウムを一般人に盗まれたことをひた隠すため、犯人の存在を隠蔽。別の犯人にすげ替える。
・沢田研二さんが扮する理科の授業は、「原爆の作り方」。
しかも、誰ひとり授業を聞いてない。
優等生でさえ、参考書を広げて受験勉強をしている始末。
・原発の内装が、「ボトムズの最終回」みたいな見た目。
あちこちに突起があって、それがプルトニウムという設定。
しかも銃で武装しただけの民間人にたやすく制圧される。貧弱!
・主人公の中学がバスジャックに遭う。
「天皇陛下に合わせろ。戦死した息子に詫びていただきたい!」
という犯人の要求に応じるシーンは、「皇居前でロケ」。(セットかも知れないが)
・確かに「材料さえあれば台所でも原爆は作れる」という説がある。
主人公は「本当に台所で」作る。
・オーブンでプルトニウムを粉状にするが、
「野球に夢中になって」いたらオーブンが破裂。
主人公が被爆。
大マジメなのかコントなのか分からない。
・飼ってる猫が金属プルトニウムの破片を、「メザシと間違えて食べて」しまう。
被爆したネコが即死。
ただ、これが主人公の末路を示していたりする。
・金属プルトニウム完成。なのに、時限装置の外見が、大友克洋監督の『スチームボーイ』調の出来。
・警察側が、逆探知時間を強引に短縮させるため、電電公社に頼んで、
「東京じゅうの電話を一瞬だけ止める」。
四回以上も。
・一度は原爆を警察の手に渡した主人公。
しかし、ヒロインのDJにそそのかされて
「チャカ一丁で警視庁に」殴り込む。
しかも「原爆の強奪に成功」する。
・「ピストルを全弾喰らっても死なない」刑事、「菅原文太」。
転落してやっと死亡。
SF好きに見せて反応を見たい、ツッコミどころ満載の作品。なのに、魅力的な映画である。
|創作ポイント:
手段が目的化していく主人公
原爆を作ったはいいが、主人公は中盤、何を政府にさせるべきか悩む。
「野球中継を延長しろ」とかしょうもない要求しかしない。
だいたい、この主人公は「原爆を作っただけで満足」してしまっていた。
自分の科学力さえ証明できたら、そこから先は何も考えていなかったように描写されている。
知的欲求が解消されてしまい、その後はテロとはほど遠い、素人以下の動きをしていた。
ヒロインのDJにラジオ番組で相談を持ちかけ、「ローリングストーンズを呼べ」と要求する。
ストーンズはシャブ中だったため、一度は来日を見送られた。
彼らを、もう一度日本に呼ぶようにと、主人公は警察を脅す。
それだって、思いつきだ。
特別ストーンズに思い入れがあるわけじゃない。
とにかく、「日本が言うこと聞いてくれたらそれでいいわー」といった短絡的な行動からである。
具体的な要求は
「多額の現金をメーデーの会場にばらまけ」
くらいか。
しかも、それは彼が袋小路から逃げるための詭弁である。
まるで、親がどれだけ自分のワカママに付き合ってくれるかを試しているかのように。
そういった不完全な部分があるためか、非常に親しみやすい悪役と化している。
凶悪犯なんやけどね。
|まとめ
どことなく抜けている部分をつけると、凶悪な犯人でも親しみやすい。
●余談
その沢田研二さんがね、後年にライブをキャンセルなさるとはね。
因果ですかねぇ……。