絶・対・に・創作の役に立たない映画評のブログ

創作に役立つ、オススメの映画を紹介

スティーブン・キング 『書くことについて』 セクシーな言い回しの多い創作指南書

f:id:pixymoterempt:20190409202121p:plain

小説家スティーブン・キングによる、創作論。 

 図書館でも借りられる。

 オレは、図書館で借りて読んだ。

前半は幼少期からデビューまで。

 キング氏も大概だが、兄キングも相当の悪ガキで、コンセントに異物をぶっさして街中を停電させた伝説を持つ。

 その後、キング氏はクリーニング屋でバイトして奥さんを養いつつ、40代でようやくデビューする。
 キング氏がここまで苦労人だとは知らなかった。もっと若くして華々しく小説世界に登場したのだと。

 当時の編集さんが持ってきたのが、キング氏が10歳の頃に出した投稿作だった。

 

中盤は創作論

 

 キングの創作術は非常にシンプルだ。
 
「作家になりたかったら、たくさん読んでたくさん書くに限る」

 と、本著で語っている。

 大事なのはそれだけ。
 あとは「キング流」の描写術が大半。

「副詞なんかいらねえ! 全部『彼は言った』でいいんだよ!」
 とかなり乱暴な創作法まで出てくるあたり、「キングっぽい」。

 特に描写面は、勉強になるところが多い。

 
『ミザリー』のアニーは、端から見れば完璧な異常者。
 髪がボサボサのまま、チョコレートケーキをホールで食う。
 が、本人はいたって正常で、道理をわきまえていると信じています。

 それどころか、自身を


「ゲスな有象無象を相手に孤軍奮闘している英雄」

 

 とみなしている。

 ミザリーがいかに怖い小説か、すごくよく分かる描写だ。
  

 何が言いたいかというと、
「異常者を『あの人は異常者だ』などという言葉で片付けるな」
 ということ。

 説明すんな。描写せんかいと。
 描写するからこそ、恐怖がひきだつし説得力が生まれるのだ。

 
「優れた小説は、物語で始まりテーマで終わる。逆はない」

  これも、非常に参考になる創作論かと。


 他にも、勉強になる技術がふんだんに詰まっている。


後半になって、「交通事故に遭って死にかけた話」を。


 キング氏は、交通事故の経験から「何か残したい!」と思って、本著を執筆開始したそう。


 キング氏をはねたトラックの運転手も、少し変わった感性の持ち主で、
「オレが作ったキャラみたいなヤツに殺されかけた、ってわけさ」
 とキングに言わしめた。
 いかにも「キングらしい」言い回しも楽しめる。


 精神科医の樺沢紫苑先生も、
「小説家になりたい人は必読」
 と、ご自身のYouTube配信にておっしゃっている。


小説の実習まで

 

・自分にきつめのDVをかました配偶者(男女問わず)が、逮捕される。
・数年後、刑務所もしくは精神病棟から脱走。
・懸命な捜索にもかかわらず、居所が分からない。
・以上のような報道を、リビングのTVで見ていた。
・玄関のドアがガチャガチャ鳴っている!

 あなたは様子を見に行く?

 こういったシチュエーションを描写せよ、というもの。
 
 ご自身のHPで解答を募っているらしい。
 が、英語ばかりだったので断念。
 今やっているかどうかも分からないので。

 

 とにかく、創作に関する勉強にはきっと役に立つので是非ご一読をー。

 

●余談

 

 キング氏の創作指南書は、本作の他に
 
「小説作法」

 というタイトルの本もある。
 こちらは、翻訳が違うだけでないようは全く一緒である。
 翻訳者の好みでお選びになればよろしいかとー。

 

●余談2

 

 創作本ではないが、骸骨乗組員という短編集に、エッセイが書かれている。

 こちらには
「オレにとって短編とはこんな感じですよー」
 という感想が書かれている。

「長編が情事なら、短編は『暗がりで行う、つかの間のキス』のようなものだ」
 と書かれている。

 これも、いかにもキングっぽいセクシーな言い回しである。