絶・対・に・創作の役に立たない映画評のブログ

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あなたは、一人焼肉にいけるか?  楽しいぜ。

3000文字焼肉

 焼肉で3000文字。結構つらかった。
 ここは肉を育てるように、じっくりと考えた。

 大阪人なので、「鶴橋」といきたいところ。
 しかし、残念ながらオレは鶴橋の焼肉は食ったことがない。
 もつ鍋は去年食べたのだが。

 やはり、地元の焼肉屋「味楽」に触れるしかないと思った。


マイブーム「一人焼肉」

 オレは今、付き合っている女性がいない。
 焼肉なので、すぐに人を誘えない。ニオイが服に付くから。
 友人とは、よく焼肉の食べ放題に行く。ただ、相手が次の日予定があったりと、時間が合わなかったりすることがよくある。また、オレのように大食漢な人も限られる。

 必然的に、一人焼肉にいく機会が増えた。

 近所に「情熱ホルモン」があるのも、一人焼肉に向かわせるのを助長している。
 最寄り駅にも焼き肉屋があるし。

 リーズナブルなメニューを頼めば、焼肉と言えど、そんなに食費もかからない。
 酒を飲まないので、情熱ホルモンでも頼むのはドリンクバーだ。
 あそこいいよね。ホットコーヒーがインスタントなんよ。あのチープさが好き。
 ジンジャーエール片手に焼肉をガッツリ流し込み、締めはホットコーヒーでまったりくつろぐ。
 平日の夜ならそんなに混まないので、慌ただしくなく、ゆっくりとできる。
 一人焼肉なので、ペースも乱されることなく、落ち着いて肉に集中できる。
 
 たしかに、一人焼肉は忙しい。
 肉の管理を気にしている間に、白米も硬くなる。
 ただ、一人焼肉での「肉を全部、独占している感じ」は、なかなか他の料理では味わえないのではないだろうか。
  

マイブーム「ホルモン」

 最近焼肉では、シマチョウをよく食べる。
「孤独のグルメ」シーズン3にて、ホルモンの焼き方をやっていて、マネしてみたくなったのだ。
 
 オレはよく、情熱ホルモンでホルモンの焼き方を練習する。
 練習ってほどではないが、よく頼む。
 あの脂っぽさは、40過ぎのオレの衣にはちょっとこたえる。
 だが、あのこってりとした脂にこがれて、ついつい頼んでしまう。
 他の肉だとすぐ焼けてしまうので、ペースが速まることも原因だ。
 特にカルビなどは、網の上に置いていたらいつの間にか焦げてしまったりする。

 その点、ホルモンはそんなに焼ける速度は速くない。
 じっくりと育てられる。

 たまに脂が炭の上に落ちちゃって、必要以上に炭がファイアーしてしまう。
 だが、それを抑える方法は知っている。


炭火焼肉で学んだこと

 

 小説講座のメンバーで、炭火焼肉を食べることになった。
 そこで、「炭火の勢いは氷で抑える」と教わった。

 ホルモンなど、脂ギッシュな肉は脂が炭にしたたってファイアーしてしまう。
 席から直接煙を吸うタイプの換気扇があればいいかも知れないが、そんな設備のない店だとちょっとあの火は怖い。

 炭火の隣に氷を置くのは、それを網の上にのせて、炭の勢いをじんわりと弱めるためなのだ。

「よくおるねん。水かけたら火の勢いがおさまるんちゃうかってヤツ。消えるっちゅうねん」
 焼肉屋の大将が、プリプリと文句を言っていた。

「氷を網の上に置いといたら、火を消さずに勢いだけ止められんねんよ」

焼肉 味楽の思い出


 大阪府堺市中区、八田北町(はんだきたまち)にある焼肉屋「味楽」。

 大阪人、堺市民なら知る人ぞ知る名店だったらしい。
 たいてい「味楽って知ってる?」って職場や小説講座で聞くと、「ああ、あそこやろ?」という話題になる。

 入る前からヤバい。プレハブ小屋のような外観の店から、もうもうと煙が立ちこめているのだ。
 その光景は、知らない人が見たら「火事かな?」と思うくらいだ。
 窓を開けると、換気扇から逃げた煙が逆流し、かえって煙たくなるくらい。
 ガキの頃、オレはこの煙が苦手で、目が痛くて仕方なかった。

 また、壁もススでベットベトなのだ。タバコもOKな店なので、ヤニもへばりついているかと思う。
 服に付いたら、もう当分着られない。
 
 今では、あの煙が恋しい。
 数ヶ月に一回はあの独特なニオイを嗅がないと、イライラするくらいになってしまった。


演歌以外かからない

 演歌や歌謡曲以外は、まったく掛からなかった。
 席に座ったらたいてい、小林幸子か五木ひろしがかかる。
 新曲やと思ったら、天童よしみの「珍島物語」である。
 学生当時は、ちょっと物足りなさを感じたものだ。
 
 
 

名物「ゾウリサイズのロース」


 この焼き肉屋の凄かったところは、ゾウリくらいあるロースが出てきたことだ。
 これで450円くらいで売っていた。
 親とも「採算取れるんかいな?」と、たびたび心配になるくらいである。
 それだけデカかったのだ。
 ロースなのですぐに焼けて、サッと食べてすく腹一杯になる。しかもタレに浸かりまくっていてうまい。
 
 今でこそロースを頼んでも、ゾウリの半分くらいのサイズしか来ない。
 枚数は増えたけどね。

 だが、オレが20代の頃までは、確かにゾウリクラスのロースが出ていたのだ。
 それを家族で二つに切って食べるというのが当時の食べ方だった。

 カルビは基本、骨付きで出てくる。
 この骨にへばりついた肉が美味いのだ。
 最近行ったとき、骨付きカルビが売り切れたのを初めて見た。
 それくらい人気なのだ。

 

タンが食べられない。

 

 なぜか、この店は「タンがすぐに売り切れてしまう」のだ。
 この店は、肉屋も兼業しており、
「よその店が買い占めている」
 という結論に達した。
 

この店の売りはタレ。


 肉が来るまでにお通しのキャベツが出るのだが、カゴに半玉ほど出てくる。

「孤独のグルメ」2シーズン目に出てきた「飢える噛む」ってキャッチコピーがある店のカゴに入ったキャベツが、本店でも出てくる。

 ただ、このキャベツをタレに漬けて食べると、止まらなくなる。
 しょう油ベースのタレで、味がすさまじく濃い。
 あまりのおいしさに、キャベツの取り合いになるほどだ。

 海原雄山の言う
「本当に美味いキャベツは芯まで美味い」
 という言葉は、味楽のためにある。


スープだけで腹一杯に

 

 この店では、注意しないといけないことがある。
 それは、「スープを頼むか否か」である。
 すじ肉ともやし、わかめと溶き卵の入ったスープが、「どんぶり鉢」で現れる。

 この店で最大のボリュームを誇るのが、このスープなのである。
 
 熱々のスープは、数口食べると箸休めに丁度いい。
 だが、どんぶり鉢で大量に来るのだ。
 小食の人は、スープだけで腹が満たされてしまう。肉を食いに来ているのに。
 実に勿体ないので、スープを頼むときは周りを見回して「あのサイズが来るのか」と、胃袋と相談しよう。
 

名物おばあちゃん

 

 味楽にはかつて「そろばんのおばあちゃん」という人物が存在していた。
 今は顔を見ないので、亡くなったのかも知れない。若い店員増えたしね。
そのおばあちゃんの何が凄いって、「全部そろばん」で計算するのだ。
 レジも電卓も真横にあるのに、だ。
「なんでやねん」と思う。


 問題は食べ終わった後だった。
 父親が真向かいのパチ屋に消えてしまうのである。
 当時、味楽の真向かいにはパチンコ屋があった。
 そこで小一時間ほど打って帰るのだ。
 何も遊ぶモノがないオレは非常に退屈。コンビニで立ち読みしかすることがない。
 しかも一時間は取り残されるので、読む雑誌もないない。

 もうパチンコ屋はなくなり、家が建って、駐車場ができている。
 
 
 そろばんの音、有線でかかるド演歌、視界すらさえぎるほどの煙、足のサイズほどあるロース。
 それが、昭和の思い出である。

 平成を経て、令和になろうとしている現在は、店も様変わりした。

 演歌はポップスになり、若い店員が数人がかりで動き回り、そろばんは柱にかかったままだ。

 だが、店のススまみれの壁はいつまでも歴史を重ねていることだろう。

 そんな壁にもたれながら、今日もロースを待つ。
 お通しのキャベツをタレに漬けて頬張りながら。

(終わり)