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めまい(1958) 最後まで過去にとらわれすぎた男

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ヒッチコック作品

 

「スコティ」ことジョン・ファーガソン刑事(ジェームズ・ステュアート:安原義人)は、犯人を追っている最中、屋根から落ちそうになる。手を貸してくれた警官が転落死してしまい、それ以降高所恐怖症に。

 症状のせいで警官をやめたスコティは、学友の妻マデリン・エルスター(藤本喜久子)の調査を頼まれる。夫婦生活は円満だ。しかし、「死んだ人間から危害を加えられるかも」という。

 

 スコティは、マデリンが運転する車を尾行する。
 車は狭い路地へ。マデリンは建物の中へ入る。そこは、花屋に繋がっていた。
 花を買い、また車に戻る。
 次の目的地は墓地。奥の墓に立つマデリン。
 カルロッタ・バルデスなる人物を参りに来たらしい。

 続いて美術館へ。買った花は、マデリンがずっと見つめている肖像画の女性の持ち物だった。
 後ろ髪のカールまで同じ。
 彼女こそ、カルロッタその人だった。

 ホテルに到着したマデリンは、「カルロッタ・バルデス」と名乗りチェックインしていた。しかし、「今日は来ていない」とフロントは言う。
 自分は確かにこの目で見たのに。

 部屋を見せてもらうと誰もいない。車も家に戻っている。


悲劇のカルロッタ

 カルロッタ・バルデスは、とある金持ちの愛人だった。
 子どもがいなかった金持ちは、カルロッタとの間に生まれた子どもを奪った。
 失意のカルロッタは投身自殺を図ったという。

 マデリンは、カルロッタのひ孫だったのである。
 遺品を眺めながら、マデリンは空想にひたるそうだ。
 しかし、学友によると、「彼女はカルロッタと自分の関係を知らない」という。


 さらに尾行を続ける。
 すると、彼女は突然海に飛び込んだ!

 家で介抱したが、彼女は去ってしまう。

 逢瀬を重ねていくウチに引かれ合う二人。

 だが、マデリンは教会で身を投げてしまう。
 

ポイント:かなわぬ恋

 マデリンの転落死を防げなかったショックから、スコティは塞ぎ込んでしまう。
 相棒の女性は、音楽療法など色々試すが、とうとう彼の元から去っていく。
 この段階で、スコティに悲劇的な結末が待っていると分かる。
 

 ようやく立ち直ったスコティは、街でマデリンそっくりの女性と出会う。
 身分も免許証も本物だ。

 執拗に彼女と会ううちに、彼は真相へと近づいていく。

 だが、狂気にかられたスコティは、真実をねじ曲げてしまう。


 このように、本作は前半と後半でまったく違う話になる。
 いわゆる「マトリックス」の手法に近い。

 前半は、元敏腕の刑事が謎を解いていく話である。
 後半は、狂気にかられた男が過去に捕らわれていく話だ。

 そこへ至るまで、「感情の波の立て方」に翻弄されて欲しい。
 快方に向かわせると視聴者に錯覚させ、「その幻想をぶち壊す」のだ。
 
 

まとめ

「その幻想をぶち壊す」ことで、上質なバッドエンドを演出する。
 

余談

 ヒッチコックは、この映画を失敗作だと評価しているそうな。
 女優が気にくわなかったらしい。