太秦ライムライト(2014) 5万回斬られた男
|70の老人とは思えない体軀
「5万回斬られた男」として徹子の部屋にさえ出たことがある男、福本清三氏。
福本氏は、ハリウッド映画『ラストサムライ』においても「kirareyaku(斬られ役)」を演じた。
本作は、55年間の俳優人生で初の主演作となる。
もちろん「斬られ役」として。
|70歳の斬られ役
出演していた時代劇の企画が、終わりを迎えた。
プロデューサーが変わった途端終わったことで、役者は不信感を募らせる。
太秦の役者たちは、現代劇にシフトしていく。
だが、主人公は撮影中、監督と揉めてしまう。
長期休暇を言い渡された主人公は、太秦にある映画パークで仕事をもらう。
殺陣を客にやらせるショーに出る。
休憩の合間、一人で木刀を振るっていると、ド新人の女性が差し入れを持ってきてくれた。
「時代劇に出るので、殺陣を教えてくれ」と。
教えるなんておこがましいと思った主人公は断った。
|時代劇が変わっていく
新シリーズの時代劇は、刀すらCGで表現するように。
主役の役者はチャラ男。監督と仲がいいので、ちょっとの注文でも
チョンマゲを嫌って歌舞伎の「獅子踊り」のズラにチェンジ。
|ヒロインの成長
ヒロインはめげずに、主人公の元で特訓する。
主人公もヒロインの本気度に押され、ヒロインを鍛え始めた。
互いに、信頼関係が生まれる。
すると、メインヒロイン役のタレントより殺陣が旨いと分かった。
ヒロインに色目を使い始めたチャラ男。
タレントは怒り出す。
逃げたタレントの代わりに、ヒロインが相手役として抜擢される。
だが、緊張してNGばかりを出してしまう。
セットの影に隠れて怯えるヒロイン。
ヒロインに、主人公は活を入れた。いきなり斬りかかったのだ。
ヒロインの活躍は、主人公にとってもチャンスだった。
若手を徹底的に育成し、若い役者を前面に出した時代劇を世に送り出そうとしていたから。
「動けるじゃないか」
と、主人公はヒロインを励ました。
期待に応えるヒロイン。12テイク目にして、彼女は撮影で大成功を収めた。
だが……。
|創作ポイント:現実
ヒロインは東京で成功していたが、主人公の謹慎はいまだ解けない。
5万回斬られた男が肘を痛めた。彼も、限界を迎えていたのである。
また、太秦も変わりつつあった。
現代劇を演じることが増え、時代劇もCGを使う。
時代においつけない老兵は、脇に追いやられていく。
限界を救ってくれたのは、かつて自分を認めてくれた役者のご子息だった。
シリーズを終えた彼は、劇場版の敵役として、主人公を抜擢した。
|まとめ
主役の福本氏は、本作の中でこう語る。
「役者とは自分を信じて、相手も信じることです」
●余談
作中、彼の集大成となる映画を撮る監督役は、中島貞夫氏が務める。