映画界伝説の長回し 『スネーク・アイズ』(1998)
国防長官が、ヘビー級ボクシングの試合観戦中に射殺される。
実行犯は倒した。たが、別の怪しい人物が逃走。
目撃者は14000人。
主人公の警官は、彼らを会場に足止めし、捜査を開始!
●この映画のポイント
『キャリー』や『スカーフェイス』を手がけた、ブライアン・デ・パルマ監督作品。
もうこの説明だけで、クセの強い作品だと分かる。
テーマ的にも、映像技術的にもアクの強い作品が多い。
本作は、それが際立ちすぎて、「もうハリウッドで撮れない監督」呼ばわりまでされたとか。
音楽が坂本龍一というのも、ポイントだ。
タイトルはアメリカの賭博用語で、ピンゾロの意味。
また、「一巻の終わり」の意味を表す。
冒頭の十三分、カメラは主人公のニコラス・刑事(ケイジ)をひたすら追いかける。
家族からの電話に受け答えをして、ヤクの売人をボコり、チャンプの試合に歓声を挙げる。
彼を彩っていた世界が、一発の銃声によって崩れ去る。
主人公は自前のヒョウ柄シャツを、テレビ映えしやすい白シャツに着替えて捜査に乗り出す。
「ここから推理パートですよー。切り替えようねー」という配慮だろうか。
試合のビデオを見るシーンでようやく、試合内容が分かるという仕組み。
こういった演出が、実に上手い。
ヘビー級のチャンプが、「わざと」倒れた直後に、銃声が鳴ったコトを知る。
この謎を追いかけるうちに、彼は絶望の淵に立たされる。
彼はこの窮地を脱出できるのか、が、この映画の見所だ。
●創作の役に立つ?
ちょい難しいかも。
長回しのシーンなど、テクニカルな一面が多いので、素人がマネをすると確実にケガをする。
素人ほど、こういった「凝った演出」をやりたがる。
だが、本作は
「デ・パルマにとどめを刺した映画」
だと言うことを忘れてはいけない。
拍子抜けするほど、分かりやすいな犯人。
「えーっ」て言うほど小悪党な事を繰り返し、自分で自分の首まで閉め出す。
主人公も、決して大勝利とは言えない結末を迎える。
ドラマが全体的に、切ないのだ。
多くの論者の不評を買い、興行的にも失敗だったとか。
オレもこの作品でワケが分からん部分を、他の映画系ブロガーさんを回って漁っていた。
絶賛していたり皮肉っていたりと、様々な感想が入り乱れていた。
ラストの赤い宝石が、中佐を誘惑した女のものやったなんて、誰が分かるねん!
(分かってるブロガーさんがいたのは驚きだ)
以上のことから、
だったのである。
でも、オレはこの作品を嫌いになれない。
それがこの監督の持ち味だ。
ここまでやりたいことをやった作品って、なかなかお目にかかれない。
●結論
ほら、どっかの地上最強の生物が言っていたではないか。
「競うな、持ち味を活かせ」
って。
好き勝手するのも大事だよね。
●余談
ガチで監督の息の根を止めた作品は、
『ミッション・トゥ・マーズ』
という映画らしい。
が、見たことはないので割愛。