(ネタバレ注意!)振り回されるは、ゾンビか監督か 『カメラを止めるな!』(2017)
ゾンビ映画のラストシーンは、もうかれこれ40テイクを迎えていた。
監督は激怒し、ヒロインやゾンビ役に当たり散らす。
休みを挟み、軽い談笑が始まる。
この撮影現場は人体実験があった施設跡地で、ゾンビが出ると、ベテランスタッフは語る。
そこへ、本物のゾンビが現れた。
監督が、儀式を行ってゾンビを蘇らせたのだ。
臨場感ほしさに。全ては映画の完成度を高めるため。
●この映画のポイント
内容は、ごく普通のB級ゾンビ映画である。
だが、その様子はどこか妙だ。
なぜ、やたら護身術で繋いでいるのか。
外はゾンビだらけだと説明したばかりなのに、なぜ、無言で立ち去ろうとするスタッフがいるのか。
都合よく、ヒロインが武器を見つけた理由は?
ゾンビに襲われ、カメラが倒れたまま撮影が続行されるシーンも。
そんな不自然な場面が続くなーと見ていたら、なんと映画が終わってしまう。
あれ、ポップコーンめちゃ残ってる。
ジンジャーエールも大量にある。
オレは時計を持っていない。スマホの電源も切っている。時間確認ができん。
スタッフロールが終わり……。
その後の展開を見て、オレは思った。
「ああ、タイトルってそういう意味だったのか」
と。
後半になり、実は「メイキングがある」と分かる。
オレは本作を、映画館で見ようと思って、
「この時間やったら、ええ席で視聴いけるやろ?」
と高をくくっていた。
いざ予約の段階になると、ほぼ前の席しかなかった。「マジかよ」と。それだけ人気作だったのである。
ちょっと、この映画舐めてた。
是非、ゾンビ映画だと思って騙されて欲しい。
●創作の役に立つ?
役立てて欲しい。
いわゆる『マトリックス』系映画。
「AパートとBパートが全然違う話」
という手法は、小説でも結構使われている。
「別のキャラの視点で物語が展開する」
という手法として、結構あったり。
「映像になっていない部分を楽しむ」という盛り上がり方もできて、得した気分にも。
実際、これをマネする小説とか増えるやろうね。
●結論
本作は、サラリーマンの悲哀であり、家族モノである。
ダブルシナリオというテクニカルでウケたのではない。
●余談
実は、本作はもう一つメイキングがある。
スタッフロールの時に、
「この映像は、実はこう撮っていましたよ」
と「本当のメイキング映像」が流れるのだ。
NG集というか。
カメラマンがこけたシーンの映像は、スタッフが実際に転倒して、そのまま「アクシデントがあった体」として流したという(制作秘話より)。
このメイキングも、実に哀愁が漂っている。
最後の映像の撮り方とかは、「ですよねー」と、思わず苦いため息をついてしまう。