なんどめだ尾頭ヒロミ 『三度目の殺人』(2017)
|前科者が犯した殺人。死刑確定?
役所広司氏扮する前科者が、勤め先の社長を殺害、火を付けて燃やした。
金目当ての犯行だった。
死刑は免れない。
福山雅治氏肯んじる弁護士は、後輩から
「犯人の人物像を理解するため、北海道に行ってみては?」
と提案される。
だが、福山氏は「そんな共感や理解など不要だ」と言い放つ。
ドライな性格である。
犯行現場へと向かうと、足の弱い少女が、遺体発見現場に立ちすくんでいた。
弁護士を見ると、足を引きずって去って行く。
現場に残った、十字架のような焼け跡。
弁護士は、偶然性があるのかどうか引っかかる。
犯人からの手紙を渡そうと、遺族の家へ。
現場にいた少女が、玄関から出てきた。
捜査中、「妻が保険金目当てで、犯人に依頼した」と女性週刊誌にすっぱ抜かれる。
裁判所との打ち合わせ後、検察が、
「あなたのような弁護士が、犯罪者を罪と向き合わせるのを邪魔する」
と一喝する。真実から目を背けていると。
小鳥を飼っていたが、死んだので埋めさせてくれと大家が頼まれたという。
その墓は、犯行現場と同じような模様が。
|犯人の不可解な言動
●この映画のポイントは、不明!
『万引き家族』の是枝監督が描く、法廷モノ。
とはいえ、事件の本質は非常につかみ所がない。
新たな証拠が出で来る度に、犯人の証言は二転三転する。
一体、真実は何なのか。
それより、「真実から目を背けているのは誰なのか」
おそらくそれが、この映画の本質かと思われる。
監督いわく、そういうことらしい。わざと難しくしたのだとか。
役所広司、広瀬すずは、北海道の雪の中で寝そべる。
その姿も、犯行現場にあった十字架状の焼け跡にも見えた。
これも、何かを意図してのことなのだろう。
|意図は明確。だが、真相は闇の中
●創作の役に立つか?
不可能ではないだろうが、難しいかと。
本作の結末は、綿密な計算の上で成り立っている。
何もかも意図的に、巧妙に包み隠されている。
こういった状況を作り出すのは、相当の腕が必要だ。
他の方の映画評を回ってみたが、賛否両論。
監督の意図を汲む方もいれば、「いや、その仕掛けこそ失敗だろ」という意見も。
だが、失敗とも言い難い。
そもそも問題提起が主題なので、解答など用意していない。
●結論
「作り手の意図に、受け手側がついていけてない」
というのは、映画ではよくあること。
|二人のクール対決
●ちょっとした小ネタ
相手側の検事を市川実日子が演じる。
こちらも実に機械的で、福山氏より人間味がない。
その姿は、『シン・ゴジラ』の尾頭ヒロミを彷彿とさせる。
是枝監督がシンゴジを見ている感じないけどね。