絶・対・に・創作の役に立たない映画評のブログ

創作に役立つ、オススメの映画を紹介

土肥ポン太さんの作ったミカンを酷評した話

はじめに(読み飛ばし推奨。文字数にも含まず)
 
 ブロガーの「こぼりたつや」さんの3000文字チャレンジというのに挑戦します。

・このテーマで3000文字以上
・画像、動画及び文字装飾禁止!
・否定&批判コメント禁止!

 では。
 

本文(ここから、3000文字チャレンジ開始)


 オレは昔、芸人の土肥ポンタさんが作ったミカンを、酷評したことがある。
 
 
 あれは、数年前。

 
 小説講座の生徒と一緒に飲んだ帰り道のことだ。

 その日は、炭火焼き肉。卒業生でデビューした作家さんがオススメだと教えてくれた店である。

 肉だけではなく、激辛のスープが出ることでも知られている。
 試しに味見をさせてもらったが、オレは小皿ですすっただけでもギブアップした。
 
 肉は人を幸せにしてくれる。
 分厚いタン、飯に合うハラミやカルビ。そして内臓系。
孤独のグルメ」で知ったホルモンの焼き方をマスターすべく、オレはしきりに「シマチョウ」を頼みまくった。

 火を見ているだけでも、心は癒やされるモノだ。

 しかも、その日は確か、「ウチの卒業生が新刊を出す」という記念のパーティだった。
 オレたち生徒はは、その先生が生徒時代にすごく苦労していたのを知っている。
 それだけに、全員が彼を祝う。

 嬉しいニュースをおかずに、腹も心も満たされた。
 

 カラオケでも行こうか、いいねーなど、そう話していたときのことである。

 
 芸人の「土肥ポンタ」さんが、TV番組の取材でオレたちに話しかけてきた。
 手に持っているのは、ご自身で作りになったというミカン。

「僕の作ったミカンを食べて、感想を言うてください」
 
 土肥さんと言えば、芸人さんというだけではなく、「ポン太青果」という農園を運営していらっしゃる。
 農家としても実績のある方だ。

 ちょうどいい。こちらは焼き肉を食べたあとだ。
 サッパリしたモノが欲しかったところである。

 焼き肉屋で、デザートを食べる機会はあった。
 しかし、大将にアイスクリームを注文したものの、オーダーが通っていなかった。
 そのせいで、デザートを食べ損なった状態で会計に。

 そんな失敗もあって、おいしいフルーツは大歓迎。

 我々のテンションも上がる。
 
 さそおいしいミカンをいただけるのだろうと思っていた。

 しかし、結果はひどいものだった。

 
 オレの感想「皮が固い!」
 隣にいた女性の感想「味が薄い!」

 
 もうね、手に持った瞬間に分かってん。このミカンはマズいって。

 まず、握った感触が軟球みたいな堅さ。
 ミカンでこれはヤバイ。
 夏みかんでも、もうちょっとふんわりしている。

 口に入れたら、ちょっとミシミシしたのね。皮が固いのよ。
 噛んでも噛んでも、皮が口の中に残っている。飲み込めない。

 肝心の味だが、薄いというか、味がしなかった。水の味と言うべきか。
 
 うまいミカンというのは、噛んだ瞬間から瑞々しい果汁が口の中で弾けていく。
 それが甘さであれば、ジュースを飲んでいる気分になる。
 口の中を隅々までその果汁で満たそうと、舌が勝手に転がり出す。
 いつまでも食べていた気持ちにさせてくれるモノだ。
 
 酸っぱさならば、まぶたがケイレンする。
 呼吸をすると、息までウマい。
 爽快感が、口内だけではなく、ノドや、頭までスッキリさせてくれる。
 夏みかんやハッサクなどの場合は、スッキリした酸味が舌を駆け抜けていく。
 ミカンの酸味は、そこにほのかな甘みが加わるのだ。
 わずかな甘みがアクセントとなって、独特の味わいが出る。

 どちらにせよ、食べた人を幸せにしてくれるのが、おいしいミカンというものだ。
 

 
 ただ、土肥さんのミカンは水しぶきをあげただけ。
 酸っぱさや甘みのような爽快感からは、ほど遠かった。
 どこまでいっても、ただの水なのである。
 まるで、ハズレな清涼飲料水を、さらに水で薄めたかのよう。
  
 あと、ミカンの白いスジ、正式名称「アルベド」がまた太いのよ。
 繊維質だから、口にまとわりつく。

 家で食べるならこれでいいかもしれない。
 ただ、売り物としては、ちょっとマイナスやなと思った。

 土肥さんから
「そんなにマズいですか?」
 と聞かれたので、素直にうなずいた。
 

 いやね、こちらにも言い分があるのよ。

 別に土肥さんのことを嫌っているわけでもない。
吉本超合金」から土肥ポンタさんのこと知ってますよ。
 農園やってることだって知ってます。

 単に、我々が「ミカンについて舌が肥えすぎ」ている。
 ただそれだけだった。

 
 まず、オレの母親は愛媛出身だ。
 それだけじゃない。
 父親の実家も、ミカンを栽培している。


 オレは子どもの頃から、甘いミカンも酸っぱいミカンも食べていたのだ。

 
 また、同じように酷評した人もバリバリの和歌山県民である。

 
 そのことを話すと、土肥さんはガックリとうなだれた。

 土肥さんは、最初から詰んでいたのだ。
 聞いた相手が悪かった。

 トボトボと帰って行く土肥さんの後ろ姿を、オレは今でも覚えている。


 ミカンと言えば、両親とも、実家がミカン山を持っていたのを思い出す。

 夏と冬に、ミカンが毎回贈られてくる。
 父方の実家からも母方の実家からも。
 一度につき、段ボール四箱分は届いていたはず。

 食べ過ぎて飽きたことがあるくらいだ。
「ミカンしかないんか?」
 と母に尋ねると、
「ミカンおいしいやん」
 と返された。
 
 あまろに多すぎて、職場の人にあげても減らない。

 うちで、コタツにミカンが載っていない日などなかった。
 
 子どもの頃、それこそ小学生くらいだったか、父の実家であるミカン農園を手伝った。
 背の低いオレでも、どうにかミカンを枝から切り取ることはできた。 取ったミカンを、カゴへ詰める。
 

 楽しみだったのは、ミカン運搬用のモノレールだ。

 
 ミカンが入ったカゴをのせるモノレールに、載せてもらえるのである。

 本当は載っちゃいけないらしいが、当時オレは小さかったので、一緒に載せてもらっていた。

 急な崖を、まったりしたスピードで下っていく。
 その適度な重力が、オレは好きだった。
 
 ジェットコースターとかは怖くて載りたがらなかったが、モノレールは楽しかったのを覚えている。
 手にレールの潤滑油が付き、なかなか取れなかったのも、いい思い出だ。
 
 父方のミカンは、やや酸っぱい。しかし、噛みごたえはしっかりしている。

 母方の祖母は、愛媛県大三島に広大なミカン山を持っている。
 愛媛の田舎で作ったミカンは甘い。実がフニャっとしているが、ぶっちゃけポンジュースよりウマいと言ってもいいだろう。

 一度だけだが、ミカン山でミカンを詰んだ記憶がある。
 高校生ぐらいの頃だったか。
 山と言っても急斜面で、ちょっと怖かった。
 ミカンを腰のカゴへ詰めていく度に、滑り落ちそうになる。
 少しでも力を抜くと、山を転げ落ちそうになった。
 身を傷つけないように、慎重に摘み取っていく。

 足下には、鳥にやられたミカンが無残に潰れていた。
 

 あれから、どうなったのか。

 母方は、祖母が高齢になり、大阪に来ている。
 もう、ミカンはやっていない。山を管理する親戚もいないという。
 大三島が遠すぎるためだ。限界集落と言っていいくらい、ヘンピな村である。しまなみ海道ができても、開発が全く進んでいない。

 父方も、ミカンはやめたという。
 ミカン農園の持ち主である、父の兄が亡くなったからだ。
 どちらのミカンも、食べられなくなって久しい。

 たまにミカンを買ってみるが、昔のような強烈さを感じない。
 おいしいことはおいしい。だが、パンチがないのである。
 素人が作ったという、調節を度外視した感じではない。
 万人受けする、おとなしい味である。


 土肥さんは、どうなったのだろう。
 オレたちにコケにされ、ミカンをやめてしまったのだろうか。
 
 土肥さんの経営する、ポン太青果のHPを見てみた。
「ライムとオレンジでつくったお料理酢」
 スーパー万代にて発売されているとか。

 ちょっとおいしそう。

 彼はあきらめなかった。
 うまいミカンを追求したのだ。
 結果、商品化にまで繋がった。

 おそらく、これからは土肥さんのミカンこそ、「故郷の味」にまで高まっていくと思われる。

(おわり:3052文字)

 


おわりに

 

 いかがだったでしょうか。

 土肥さん、当時は失礼致しました。

 いただいたのは、オレンジだったかも知れません。
 記憶違いでしたら申し訳ございません。
 お体にお気をつけください。

 

 また、こぼりたつやさん、おもしろい企画をありがとうございます。

 

 最後に、読者の皆さん、読んでくださりありがとうございます。