クールジャパンだからこそ許される設定 『聖☆おにいさん』(2013)
|日本のアパートで、キリストと仏陀が暮らしている。
異教のトップが一つ屋根の下で暮らしているという、トンデモ設定。
イエスはコンビニで、「ジョニデに似ている!」とJKに言われて喜ぶ。
仏陀は「仏陀っぽい」と声をかけられる。
二人は夢の国ではしゃぐ。
見てる方からすると、変T着てる二人の方が楽しい。
「スジャータ」なんて、関西人以外誰がわかんねん。
お経唱えながらコースターから落ちる。
床屋で仏陀が、「散髪してもらおうかな」とつぶやく。
タイムセールとゲーム、どちらを選ぶか迷うほど煩悩まみれ。
イエスはカナヅチだったり、モーゼみたいにプールの水を真っ二つにしたりと、かなりキレたキャラである。
原作は、アニメ化やドラマ化もされた『荒川アンダー ザ ブリッジ』の中村光氏。
|本作のポイント:予備知識不要
聖書などを読んでないと面白くないとか、そんな分かりづらい作品ではない。
知っていればより面白いだろうが、特に知らなくても楽しめる。
二人の奇行を見て笑うことがこの映画の楽しみ方かと。
印象的なシーンとして、二人が行方不明になる時間帯がある。
ほんの数分の話。
だが「神仏ロス」は、住民を落ち込ませるには十分だった。
彼らをからかっていた子どもたちも沈んだ表情に。妙な切なさをかもし出す。
彼らはただ、温泉旅行に行っていただけなのだが。
|創作ポイント:クールジャパンを発揮したキャラ設定
ゲームの『女神転生』シリーズしかり、神様が入り乱れる物語というのは、日本ならではといった感じ。
主人公二人は神様と仏様だが、感性は日本人そのものである。
「日本人が作ったから当たり前じゃん」と思うかも知れない。
だが、それだけで十分強みとなる。
神格が日本の下町の中に溶け込んでいく姿は、いかにも日本的発想だ。
創作とは、フリーダムでいいのである。
宗教の自由がある日本だからこそ、宗教観にとらわれない作品が作れるというものだ。
神仏の扱いに制約が多い海外では、ここまで神様をフリーダムに作れないのでは。
先入観にとらわれていると、頭でっかちな作品になってしまう。
北欧神話を使った『マイティ・ソー』などは、頭が悪くて楽しい。
どちらかというと、設定だけ借りてきたという感じだが。
いかに元ネタを料理するか、どうすれば面白くなるのか。
そこを意識して本作を見ると、徹底的に調理法を考え抜いた作品だと分かる。
|まとめ
先入観にとらわれない。
●余談
中の人は、森山未來さんと星野源さん。
OVAでも、二人が演じていらっしゃる。
アニメファン向けだと、てっきり声優さんを使うのかと思ったが。
たしかに、このお二方以外の配役は浮かばない。