アメリ・プーランは告らせたい 『アメリ』(2001)
|金魚より不自由な女
身体が弱いと両親から誤解された少女アメリ。
彼女は学校に通えず、家で教育を受けていた。
ある日、飼っていた金魚に家出される。
金魚鉢から川に戻される金魚を、家から出られないアメリが見つめる。
アメリは、金魚より自由がない。
実に印象的なシーンだ。
|アパートから出てきた宝箱
大人になっても、働き始めても、男性と性行に及んでも、アメリはまだ空想の世界に浸っていた。
自分の家の壁に穴が開いた。
そこからは、誰かが思い出の品を封じ込めたブリキの箱が。
タイムカプセルだろうか。
この箱を持ち主に返してやろう。
そうすれば、自分は空想の世界から解放されるかも知れない。
数々の失敗を経て、ようやく老人に箱を渡す。
世界と調和が取れだしたアメリは、盲目の男性に道を教えるなど、人と関わるようになっていく。
そんな彼女にも、思い人が現れる。
|行動力の化身
アメリのおせっかいのおかげで、たばこ屋は男ができ、絵描きは絵画のヒントを得て、八百屋の青年は勇気を持つ。
だが、アメリは自分の幸せに踏み込もうとしない。
お目当ての男性をポルノショップで発見。した。
が、回りくどい方法で青年を誘導する。
こんなバイタリティがあるならささと告ればいいのに!
自宅の庭を番するドワーフを海外へ連れ出すエネルギーはある。
今風に言えば、行動力の化身だ。
だが、すぐ目の前にある恋愛からは、自分から遠ざかるような行動を取ってしまう。
マイナスな方向へ、自らを導いてしまう。
青年も、彼女のアプローチには気づいている。
だが、青年も変人なので、相手のペースに巻き込まれ、前に進めない。
|創作ポイント:不器用な少女
ハッキリと言ってしまえば、本作は「恋に右往左往する女性を描いた作品」だ。
本作以前にも、そんな作品は山ほど作られた。
だが、ここまでファンタジックに乙女心を描いた作品は珍しい。
日本のアニメでも、なかなかないのでは?
気になる男性へのアプローチがことごとく婉曲的。
もったいぶって駆けずり回る描写が実にマンガっぽい。
だが、それが彼女の複雑な心境を描いている。
誰よりも純粋な乙女心を持つゆえに、素直でない。
空想の世界にいたため、人との接触で傷つくのが怖い。
そんな真理が、彼女を奇行に走らせる。
幸せは目の前にある。
お互い意識し合っているのを、観客は把握している。
なのに妄想を具現化したような演出で、相手を煙に巻く。
そんなよく分からない女心を、ファンタジックな描写で表現している。
この手法、最近どこかで見たなーと思って記憶を辿ってみた。
で、出てきたのは、「かぐや様は告らせたい」である。
つい最近アニメ化されたこのマンガ、本作とほぼ同じ構造なのだ。
どちらの作品も、
「好きな異性に自分から告る勇気がないため、相手に行動を委ねたい」
というテーマである。
|まとめ
「異性に告らせたい」
というだけでも、様々な表現法がある。
●余談
この映画のあと、イギリスで「アメリ」と名の付く赤ん坊が急増したとか。
2007年には、1000人ものアメリが誕生したという。