朝ドラのヒロインが、下流の女に 『百円の恋』
主人公は、夜中にコンビニに出歩く程度のニート。
甥っ子とゲームするのが日課だ。
ある日、離婚して出戻ってきた妹とケンカになり、主人公は家を追い出された。
母からの餞別でアパートを借り、近所の百円ショップで働くことに。
仕事の行き帰りで見かけるボクシングジム。
そこで、黙々とトレーニングをしている男性を気にし始める。
彼はコンビニの常連で、来店の度にバナナを買う男性だった。
あるとき、彼は「バナナの金を払えない」と言い出す。
代金の代わりに手渡ししてきたのは、引退試合のチケットだった。
試合の結果は彼の負け。
しかも、主人公は付き添いの同僚に乱暴されてしまう。
犯人である同僚は、店の金を持ち出して逃走。
そこから彼女は、本格的にボクシングを始める。
●この映画のポイント
彼女はこの映画で、第39回日本アカデミー賞、最優秀主演女優賞を受賞。
2018年公開の映画『万引き家族』にも、リリー・フランキーさんとダブル主演。
TVでは、チキンラーメンの開発者夫婦を描いたNHKドラマ『まんぷく』のヒロインを演じている。
今まさに旬の人、と言ってもいいだろう。
そんな彼女が、汚れ役に挑戦しているのが本作である。
しかも、体型があまりよくない。
見た目的に、太り気味なのだ。顔もなんか丸い。
ボクシングも、最初は素人以下の出来である。
シャドーすらまともにこなせないほど。
それが、人生で苦い経験を積む度に、軽快なフットワークになっていく。
見るからに身体が引き締まり、パンチに腰が入り始める。
店の中でも、ゴミ袋をサンドバッグ代わりにして打ち込みを繰り返す。
顔つきまで変わり、死んでいた目にはギラついた眼光が覗くように。
●創作の役に立つ?
十分ではないかと。
「上げて落とすシナリオ」は、最初こそ見ていて苦しい。
しかし、波に乗っていくと次第に面白くなっていく。
また、このキャラたちの価値観・倫理観は、少し変わっている。
この映画には、妄想癖のある中年女性が出てくる。
彼女は、主人公から廃棄弁当をもらって飢えを凌いでいる。
だが、終盤で彼女は重大な犯罪を犯す。
そのとき、主人公は意外なリアクションを見せるのだ。
なんかスカッとするというか、「ざまぁ展開」というか。
この部分だけは、海外映画のような価値観でキャラが動いている気がした。
そういった倫理観のバランスなども、参考になるのでは?
●結論
マイナー邦画は、出会い。
マイナー邦画でも、良作はある。
でも、自分で探そうとなると大変な労力になる。
この手の作品は、本当に出会うべくして出会う。
なので、無理に探す必要なし。
●余談
安藤サクラさんは、本作でベッドシーンにも挑戦している。
が、上記の理由で、そんなに興奮しない。
あまり期待しないように。