プレゼントは良質なミスリード 『ザ・ギフト』(2016)
|旧友との再会
新居を求めて里帰りした夫婦。
妻は仕事の傍ら、妊活中だ。
過去に小作りに失敗し、気分転換のために引っ越してきたのだ。
ショッピングに出かけた二人は、夫の同級生ゴードと再会。
しばらくして、夫のゴードから、ワインが届けられた。
住所は教えていないのに。
鯉を飼いたいといったら、魚の餌が玄関に。
庭の池に鯉がいた。勝手入れられたのだ。
夫は高層ビルの中にオフィスを構える成功者。
絵に描いたような、幸せいっぱいの夫婦。
妻の方は、なんとかゴードを好意的に見ようとしている。
ゴードは自分たちに嫉妬しているのだと、夫は断言する。
|おかしくなる日常
ゴードの誘いで夕食に招待された主人公夫婦。
しかし、ゴードは元妻との電話で席を立つ。
しばらく、ゴードを罵る夫。
あきれ顔の妻。
夫は戻ってきたゴードに「もう関わらないで欲しい」と告げた。
翌日、庭の鯉が死んでいた。飼い犬も行方不明に。
文句を言いに夫は車でゴードの元へ。
だが、家には別人が住んでいた。
ゴードは家主の車の運転手をしていていたのだ。
彼らが旅行中のところを、勝手に自分の家として使用したのだ。
犬も見つかって、安心したヒロイン。
だが、家の中でヒロインは倒れてしまう。
目が覚めたヒロインは夫に声をかけられる。
だが、隠し持っていた精神安定剤が、夫に見つかっていた。
|変態に振り回される話と見せかけて……
●この映画のポイント
この手の話は大体、
「ストーカーに振り回される善良なカップル」
という図式になる。
ところが、ストーリーが中盤に差し掛かると、この話は全く違うタイプの物語だったと分かる。
夫は一見成功者に見える。
だが、その本質は自分本位で高圧的だった。
身ごもって嬉しいはずなのに、妻は夫の性格に疑問を抱くようになる。
念願の子どもを宿す妻。
だが、彼女は夫の過去を彼の幼なじみから聞き出した。
そして、彼の暗い秘密を知ってしまう。
ゴードの過去。
それこそが、彼女たちにとっての「ギフト」だったのである。
|強烈なミスリード
●創作の役立ちポイント
オーソドックスな話が、実はフェイクだったという構成は、本当に見事だ。
ゴード役のジョエル・エドガートンの演技もあり、彼が決してキモいだけの男性でないと分かってくる。
後半になるにつれ、あなた方は段々、彼を応援したくなるだろう。
殺人事件など起こさなくても、これだけの良質なミステリは作れるのだ。
|結論
手垢のついたストーリーも、味付け次第でここまで見事なミステリに。
|余談
監督と脚本と製作を、なんと演者のジョエル・エドガートン自らが担当しているらしい。