ロード・オブ・ウォー(2005) スネークはそんなこと言わない
|エセユダヤ人が武器商人に
主人公(ニコラス・ケイジ)は、ユダヤ人を装いレストランを経営する父を持つ。
敵情視察に赴いた先のレストランが、銃撃に遭う。
銃がビジネスになると直感した主人公は、弟を相棒にして武器商人へ。
弟は、ジャレッド・レトが演じている。
だが、道は険しく、関係を持とうと思っていた商人からは相手にされない。
軍人と闇取引をしてどうにかなりそうだったが、直後に側面から銃撃に遭う。
自分を狙っているのではない。少年を処刑している場面に出くわしたのだ。
武器を船で輸送中に、巡視船のチェックが入る。
乗っているのは、ジャック・バレンタイン。金では買収できないタイプの捜査官だ。
慌てて船をオランダの船名に変える。だが、オランダ国旗がない。
弟は機転を利かせて、フランス国旗を縦にしてオランダに見せかけた。
こういった頭の回転の良さを、主人公は評価したのだろう。
だが、取引の報酬として手に入れたコカインにドハマリし、弟が失踪。
更生施設へ送るハメに。
|家族より冷戦終結
1991年、彼は幸せの絶頂にいた。
欲しい女は手に入れた。子どももできた。
だが、主人公にとって最も幸せだったのが、冷戦の終結、ソ連の崩壊だった。
「見ろよ、冷戦が終わったんだ!」
主人公はニュース番組を流すテレビにキスする。
「息子が歩いたのよ?」
「ああそうだね!」
と、またテレビに向き直る。
このときの、息子を抱く妻の微妙な表情が、後のストーリーを物語っている。
武器商人の腕を買われ、とある紛争地帯の大統領と取引をすることに。
こちらも親子だ。しかも凶悪である。
ピストルで部下を撃ち殺すような。
だが、主人公は、部下を平気で殺す非人道的行為は気にしない。
一発撃ったことで銃が中古品になったことに怒り出す。
彼も大概だ。
|創作ポイント:才能
本作における悲劇の発端は、彼に銃を売る才能があった部分にある。
「オレには才能がある」
終盤、彼は自分でも認める。
人を殺す武器を仕入れ、書類を偽造し、貧しい国に売り飛ばす才能が。
インターポールさえ煙に巻く才能が。
紛争国家の大統領さえ丸め込めてしまう、恐るべき才能が。
その才能は、かつて自分を蹴った大物さえ出し抜いた。
だが、主人公はその相手まで撃ち殺してしまう。
不可抗力とは言え、ショックは大きかった。
妻に説得され、カタギになる。
だが、まったく儲からない。やっている人間が多すぎるのだ。
一生懸命やっているのだが、結果は微々たるモノ。
しかし、妻との約束のため、仕事をやめようとはしない。
だが、才能は彼を引き留める。
本作ラストにおける皮肉が、また空しい。
|まとめ
才能があることが、幸せとは限らない。
●余談
一時期、本作は『アメリカン・ビジネス』というタイトルがつけられかけた。
「いやいやアメリカの批判なんかしてないし!」
という監督の抗議を受け、とりやめになった。
アメリカの武器は、高価な上に取り回しが難しく、紛争地帯のような貧民国では扱われないのだとか。
だが、この映画においての皮肉は、主人公を演じるニコラス・ケイジの吹き替え担当が、声優の大塚明夫さんであることではないだろうか。
「メタルギア・ソリッド シリーズ」のソリッド・スネークは、大塚さんの代表作の一つ。
スネークは戦争に身を置きながら、争いを好まない軍人である。