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走れ、絶望に追いつかれない速さで(2016) 飛ぶんかい!

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友人の自殺

 日本海、富山にて、薫(小林竜樹)が自殺した。

 漣(太賀)は薫の両親から、遺書と遺品を手渡される。
 
 遺品の中には、薫が中学時代に同級生だった少女の絵が。

 友人の死には、彼女が関わっているのかも知れない。
 
 薫はなぜ、死んだのか。
 謎を追って、主人公は富山へ向かう。
 薫の元カノである理沙子(黒川芽以)と共に。
 


 本作は、現在進行と同時に、回想も多数挟まれる。

 薫は遠距離に就職したことで、理沙子と別れた。
 ちゃんと話し合わせようと、電話をかけさせるが、傷口に粗塩を塗っただけだった。

 腹いせに、薫は蓮が父親と上手くいっていないことを話題にしてしまう。
 
 弁解のためかヤケ酒の勢いからか、薫は蓮を連れて女を口説きに行く。
 が、気が立っていた蓮が、誘った女性や客と揉めてしまう。
 薫も店の備品を破壊してしまい、会計もすまないまま逃げ出す。

 大人になりきれていない二人。

 そんな蓮に、薫は言う。
「絶望に追いつかれないように走れ」と。

言葉の真意

 出発の前、理沙子が部屋を訪ねてくる。
 薫と蓮は、ルームシェアをしていた。
 薫が出て行った後も、蓮は引っ越さず、部屋に留まっていた。

 理沙子は、蓮に「あなたに嫉妬していた」と語った。
 蓮の話ばかりするからだと。
 せっかくだからと、即興で理沙子もついて行くことになった。

 富山に着くと、薫が身を投げた崖に。

 
 ヒザから崩れ、理沙子は泣きわめく。
 
 
 最後まで付き合うつもりが、理沙子は今カレから連絡を受け、帰ることに。
 宿の部屋で、蓮は「じゃあ、なぜ来たんだ」と責める。
 
「だったら、同級生に会ったら、何か変わるの?」
 と、理沙子も言い返してくる。
「近くにいたのに、どうして彼のことが分からなかったのか」と。
 

ポイント:虚無感

 本作は、大切な人を亡くした虚無感を味わう映画である。
 
 蓮は、ようやく薫の同級生を探し当てた。
 だが、それは蓮の理想とはかけ離れた、切ない出会いだった。

 ロストした人物が、どのような重大な謎を持っていたのかを、主人公たちは探す。

 だが、真実は特に意味があるわけではなかった。

「きっと、ものすごくくだらなくて、どうしようもない理由で死んだんだな」

 という重みが、主人公にのし掛かる。

 重大な謎も、繊細な伏線も、ドラマチックな展開も、何一つとして起きない。

「人生なんて、そんなもん」  
 そんなリアリティを、後半で叩き付けてくる。

 非情に重たい構成だ。

 虚無感に苛まれ、主人公たちは日常へと戻っていく。


 だが、何も変わらなかったわけじゃない。

 日常は続く。
 だが、ほんの少しだけ、色彩を放って。

 主人公は、薫が故郷を離れる前に見たという「ムササビみたいなヤツ」を、職場から帰る途中で発見する。

 薫が見たかった風景を追うように、彼は新たなチャレンジを行う。

 そして、視聴者はこう叫ぶだろう

「飛ぶんかい!」

まとめ

 正解がない、真相がない、ドラマがないドラマもある。

余談

 当時27歳の若い監督の作品だからか、感想は様々。
 
「キラキラしていて40代にはキツい」
「三回見て、三回とも泣いた」

 など。