帰ってきたヒトラー (2015) 諸君、私はTVショーが好きだ。
総統、現代ドイツへ
ヒトラーがタイムスリップする話。
現代に現れたヒトラー(オリヴァー・マスッチ:飛田展男)は、状況が飲み込めず、地下壕へ逃げようとするが、道が分からない。
街を歩いてはセグウェイにはねられかけ、スマホで写真を撮られる一方。
売店の新聞で、現在が2014年と知る。
ファビアン・ザヴァツキ(ファビアン・ブッシュ:増元拓也)という元TVマンが、ヒトラーが寝泊まりしている売店までインタビューをしに来た。
彼はTV局をクビになった。復職するため、ヒトラーを連れて旅番組を作るという。
当のヒトラーも、低俗なTV番組に苛立ち、「国民の声を聞くぞ!」と街角政治討論を提案してきた。
サシャ・バロン・コーエン方式
この映画は、いわゆる「サシャ・バロン・コーエン」の方式が取り入れられている。
「ヒトラーによく似たオッサンが、ヒトラーになりきって、町人に政治の不満をガチでぶちまけてもらう」
という感じのドキュメンタリー映画となっている。
インタビューを受けているのは、「ガチの素人」である。
現地人との会話は全てアドリブだという。
売店のおばちゃんなどは、「選挙に行かない」と主張する。
「東ドイツ出身だが、今だって投票相手が最初から決まっている」
「この間は、外人の子どもに石を投げられた。訴えたいが親に刺されそう」
と、おばちゃんはリアルな愚痴をこぼす。
「外国人の流入」は、他の相談者からも問題視されていた。
別の高齢者に意見を求めると、
「原理主義者は出ていけ」
と、門前払いを喰らうことも。
真っ向方ケンカを売ってくる相談者もいた。
「ドイツ人め!」と殴りかかる若者も。
中でも、「監督にガチギレするヒトラー」は、Twitterにもアップされている。
「ボクは九ヶ月も監督している。まともな監督なら一ヶ月で終わるはずだ!」
と、監督に激怒している。
このメイキングシーンが、もっともヒトラーっぽくて面白い。
ポイント:虚構が真実に
ヒトラーは、極右の本部にまで足を運び、ヘタレっぷりに憤慨する。
結果的に、民衆扇動の容疑が掛かる。
だが、罪に問われることはなく、むしろ英雄視され始める。
ヒトラーは一躍有名になった。
賛否はあれど、YouTuberさえほっとかない存在に。
だが、彼の民衆扇動は止まらない。
いつしか彼は、本物の革命家になっていく。
誰も彼を止められなくなった。
ザヴァツキも最初はヒトラーを
「自分のことをヒトラーだと思い込んでいるオッサン」
だと思っていた。
そのザヴァツキも、とあるアクシデントが原因で、オッサンが本物のヒトラーだと知る。
だが、誰も信じようとしない。
彼が国を帰ることができる存在かどうか。
民衆は、そこにしか興味がなかったから。
まとめ
カリスマは、求められるべくして存在する。
余談
ヒトラーの中の人は「飛田展男」さん。
アニヲタなら、「HELLSINGの少佐」と言えば分かるだろう。
少佐の演説は、今でも語り草になっている。