クレしん 対 老害 『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』(2001)
|そして、父をやめる
ある日、春日部町の大人たちが、子ども返りしてしまうという謎の現象が発生。
ひろしも、育児放棄してしまう。
|いまだ名作と名高い作品
劇場『クレヨンしんちゃん』シリーズの9作目である。
歴代のクレしん映画の中でも、本作が面白いという「オトナ」は多い。
ただ、子ども受けはそんなによくないみたい。
前時代的ギャグなど、ネタが昭和過ぎるからだろう。
両親が妹の面倒を見なくなった代わりに、しんのすけが世話をするというシーンも。
こういった、「いつものシナリオが崩壊」するという異常事態は、最後あたりまで持続する。
見る側も、緊張と覚悟を要する場面だ。
|創作ポイント:
秘密結社「イエスタデイ・ワンスモア」
この映画で際立っているのは、「イエスタデイ・ワンスモア」の存在だ。
ネーミングセンスが実に秀逸である。
名前からして、実に
「どこまでも後ろ向き」
なのだ。
カーペンターズの曲名を名乗る彼らは、昭和を愛し、平成を憎む。
便利になっていく社会に順応できない。
秘密結社の名前からは、
「オレたちに明日はない。あるのは昨日だけ」
といった覚悟がうかがえる。
未来を生きようとする者らにとって、もっとも恐ろしく危険な思想の持ち主だ。
こういう、「成長を好ましくないと思う人々」を、世間では
「老害」
と呼ばれている。
老害の巻き起こす被害は凄まじく、
「彼らのせいで日本は停滞を余儀なくされている」
と声高に叫ぶ人々は多い。
クレしんの敵であり、子どもの敵でもある「イエスタデイ・ワンスモア」とは、
『老害を体現した組織』
そのものなのである。
攻撃方法も見事である。
「昭和をなつかしむニオイ」
という武器を開発し、大人たちを洗脳するコトに長けた秘密結社である。
幼児退行させられた大人たちは、みんな子どもたちを放置する。
大人が役割を果たさなくなったことで、都市機能がマヒ。
子どもたちはパニックに。
親なしでは生きていけない子どもにとって、ここまで効果的な作戦はない。
おそらく、しんのすけを精神的にここまで追い詰めたライバルは、後にも先にもイエスタデイ・ワンスモアくらいなのでは、と思われる。
違ってたら申し訳ない。
肉体的には『温泉』の敵の方が怖い、とか意見があるかも。
それだけに、そこからの逆転劇がまた泣けるんだ。
クレしんいいなぁ、と思わせてくれる。
決して「キレイなクレしん」と片付けていい作品ではない。
|まとめ
「新しい時代を作るのは老人ではない!」
クワトロ・バジーナ
●余談
藤原啓治氏と矢島晶子氏は、2019年から放送を開始したTVアニメ、
『荒野のコトブキ飛行隊』