【マンガ】『乙女文藝ハッカソン』に見る『書かないヤツらへの冷酷な態度』は、残念ながら当然
ハッカソンって何?
作家志望の「安達倉 麻紀」が入学した地方大学の文藝部には、 チームワークによって小説を書く「文藝ハッカソン」なる競技が存在した。
ITエンジニアたちがおこなう開発競争「ハッカソン」(ハック+マラソン)の概念を創作に取り込んだ競技である。
5人のチームで5万字の小説を24時間で書き、出来を競う。
架空の競技で、実際にこのような競技が大学内で存在しているわけではない。
創作者として「文藝ハッカソンってどう」よ?
◆メリット
●練習にはなる。
「ムリヤリ書く」
という作業は、創作する上で避けて通れない。
ネタが尽きたとき、そういった経験が活きて、作品作りが可能になっていく。
かつて、作曲家の服部克久も、父親から大量の曲を作らされたらしい。
●発想は面白い。
実際、中国の小説業界は「分業」が多いらしく
「誰々はアクションが得意で、私はラブストーリーが得意なので、分業しましょ」
というスタイルが確立されているらしい。
ドラマの脚本作りのようなシステムか。
だが、何より効果を持つのは、
☆締め切りを守る作家になれる
何より効果的なのは、締め切りをちゃんと守れる作家になれること。
時間制限があるというのは非情に効果的で、
「この作業をするには、あと何時間が必要だから、その間にネタが探せる」
「手が遅いから、取材はほどほどにして初稿だけでも書き始めておこう」
といったペース配分が容易になる。
一度「ガーッ!」と書いてみて、書き直すという期間を短縮して、
「この期間からこの期間までの間に一作書く」
という練習は、「プロを目指すなら」絶対にすべき。
◆注意点
●プロを目指さないなら、ペース配分は不要
どこかに発表するつもりがない。しても年一回くらいなら、特にペースは必要ない。
ヘタにペースを守ると、かえって自分の趣味時間などを潰してしまう可能性がある。
☆書きたいモノと違うモノができあがる危険あり
あまり創作術を突き詰めると、こじらせてしまい、創作者にありがちな
「ノウハウコレクター」
になる。
ハッカソンは競技なので、その危険性はより強い。
新人賞作品にもよくあるので、ハッカソンならなおさらだろう。
まとめ
「練習には使えそう」とは思う。
「第三者を編集と見なし、課題を出してもらい、ムリヤリ作品を絞り出す」
という作業は、いつか経験しておいた方がいいかと。
ポイント:「書かないヤツ」に対する態度
本作には、純文学志望者出てくる。
主人公の先輩たちにプロット案を相談しに来た。
が、抽象的すぎて物語にならない。
「物語が進まないのは、登場人物に背景を持たせていないから」
と、意見も的確で辛辣だ。
また、SF好きとミステリ愛好家なので、ロクなアイデアが出ない。
彼女はこれ以上、物語に直接絡んでこない。
登場人物たちによる、彼女への態度も実に冷淡だ。
主人公は不思議に思い、先輩に理由を尋ねる。
先輩たちは、その女性をこう評した。
「なんだかんだ言って書かないから」
アイデアに乏しい主人公は、いつか自分も同じような態度を先輩から受けるのではないかと怯え出す。
実にリアルだ。本作に置いて最もリアルな場面は、おそらくここだろうし、作者が力を入れているのも分かる。
かつて、オレもそう言うヤツを何人も見てきた。
エタったり、プロットや設定資料集しか持ってこないヤツは、たいていこのタイプだった。
彼らの何が不愉快かというと、
『例に漏れず、「傑作主義者」で、他人の駄作を許さない』
点だ。
やれ「あの作品はココがアカン」だの、「最近の作品群はつまらん」だのと。
創作者のくせに「作ったことがない」ので
「作り手の苦労が分からない」
ため、作り手の顔も想像できず、平然と作品をあげつらえるのだ。
しかも、本人は「指摘して上げている」と思っている。
ウンザリする。
志が高いだけで、まったく手を動かそうとしなかった。
結果、作中の先輩と同じような態度を取っている。
残念ながら、「書かないヤツ」というのは、どれだけ指摘しても書かない。
「練習は女々しい」と思っているから。
「書ける人」というのは、アドバイスを受けて「なんだよ!」と思っていても、修正してくる。ヘタでも書いてくる。
「書けない人」というのは、「やり方を知らない」か、「やり方を間違っている」だけ。
コツさえ分かれば、いつか書けるようになる。
「創作に意識が向いている」から。
ヘタでも書くのだ。そのうち、後から結果がついてくる。
今は上手じゃなくていい。小説作法が必要なわけじゃない。
ただ、「書かないヤツ」というのは「やらない」ヤツの可能性が高い。
「創作に意識が向いていない」から。
「書けば傑作ができる」
と思い込んでいるので、練習しない。現状に満足ができない。
作品を持ってきても「未完成品」を持ってくる。
それもプロット段階のものを、平然と「完成品」と称して。
「書けない人」は、「ヘタな完成品」を持ってきて、修正案を聞いて、また完成度を上げる。
対して、「書かないヤツ」というのは「常に未完成品」を持ってくる。
「まだ本気を出していないアピール」なのだ。
「いやいや、これから作業するから」と、いつまでも机に向かわない。
そう言う人にこそ、「ハッカソンというのは存在する」のだと思う。
脳に「小説を書け!」とムリヤリ伝達させることで、手が動くようになる。
「書かないヤツ」というのは、その伝達部分がせき止められているので、いつまでも立ち止まっている。
で、書けなかった人たちに次々と追い抜かれる。
結果、また「書かなく」なっていく。書けないのではない。「やらない」のだ。
ならば、対策は「ハッカソン」だ。
ヘタでも許されるって事はないだろうから、完成をは当然上がっていく。
チームワークだから、自分の番で止める訳にはいかない。
分業だから、苦手分野は丸投げすることだって可能だろう。
「一人ハッカソン」でもいい。
お題だけ人に出してもらって、制限時間を設けて取り組むのだ。
「モノガタリー.com」なんて最適ではないか。
そこには、365日分のお題がある。
皆さんも、創作を志すなら「やらないヤツ」にならないように。